GR PHOTO FESTIVAL 2022 GR PHOTO FESTIVAL 2022

“カメラを持ち歩き、日々を気軽に撮影した写真を大事にしたい”という
GRの写真への思いのもと、GRシリーズで写真を楽しまれているみなさまに、
幅広く参加していただく企画として、本年より新たに実施いたします。

世界各地の写真家複数名に、それぞれの視点で作品を選んでいただく、
作品の優劣や順位をつける従来とは少し異なるフォトコンテストです。
賞金も賞品もありません。

テーマは「日常」。
なにげない毎日にこそ、大事な瞬間がある。
カメラを持っていると、日々そのことに気づかされます。
そんなあなたの大切な「日常」を、ぜひGRで残してみませんか。

「GR PHOTO FESTIVAL」を通じて、写真の楽しみ方や
新たな視点に出会う機会になることを願い、世界中から多くのご応募をお待ちしております。

「GR PHOTO FESTIVAL」は、GRシリーズで写真を楽しまれているみなさまが、本企画を通じて、
写真の楽しみ方や新たな視点に出会う機会になることを願い、世界中から作品を募集させていただきました。

みなさまのそれぞれの視点で「日常」をテーマに、世界各地から約3500点もの作品をご応募いただきました。
ご応募くださったみなさま、ありがとうございました。

それでは、世界各地の審査員10名がそれぞれに選定くださった3作品を紹介させていただきます。

また、複数の審査員から選ばれた作品は、各審査員の選評とともにご紹介しております。

  • ※各審査員に最初に選定いただいた30点に重複作品があったため、「複数の審査員から選ばれた作品」として紹介させていただくものとし、追加選定により32作品を入賞とさせていただいております。
  • Michael MA

    (香港)

    GR III

    選評
    人生という時の流れの中で、それぞれの人がそれぞれの速度の流れで生活しています。時に、流れが澱んで遅くなったり、逆に速くなったりしますが、人生において流れの速さは重要ではありません。人生の流れは常に一方向です。GRオリジナルの深みのあるモノクロ表現、広角構図、適切なシャッター速度の選択によって、我々の日常生活は写し取られ、人生の一断面が完全に露わになります。

  • Brodie Clark

    (オーストラリア)

    GR III

    選評
    目の高さまで傾いた日の光が車窓から差し込み、タバコに火を点けるのも忘れてしまうほど疲れ切った男の一日が終わろうとしている、そのような瞬間に思えます。
    オーバーシュートしないように捉えた午後の光はどこか眠気を誘います。フレーム構図の中にもう1つフレーム構図を入れると縦や横にずれることが多いですが、それもなく、本当に家に帰りたくなるような一瞬がその光の中に有ります。
    窓の光に映る女の顔が、マンガのふきだしのように漂う男のタバコの煙に重なって、彼が家族のことを考えている最中のようにも見えてきます。この作品を見ると、1日が終わった安心感で本当に眠気を感じてしまいそうです。

  • 上垣内 晋

    (京都府)

    GR IIIx

    選評
    映画「アバウト・タイム」の主人公の父親は、いつも時間旅行をしていましたが、死ぬ前に息子と過ごした時代に戻ろうと決心します。
    息子と手をつなぎ、美味しいものを食べ、一緒に海辺を歩きながら、父親として、一人の男として息子に向かい合います。
    特別なことなど無い、ごく普通な一日でしたが、人生の中で最も貴重な忘れられない日となりました。
    私たちが生きている今この瞬間は、10年、20年経った後、一番戻りたい日になるかもしれません。
    本作品は、子どもを産み、育ている間に必ず直面しなければならない光景の写真です。願っても戻れない、その瞬間の感情が表現されています。

    将来の子供への最高の贈り物となる瞬間で、宝物のような写真です。

  • Jesús Vázquez Toro

    (スペイン)

    GR III

    選評
    ストリートでは皆が適度に分散して思い思いの方向へ進むのを見れば分かるとおり、ストリート写真の撮影において、何を求め、何を見つけるかは撮影者次第です。撮影者は動線の組み合わせの真っただ中にあり、これはある真理を探し求めるための空間配置とも言えます。

    写真は、フラットな二次元空間です。光の形、色とりどりの線のブロック、被写体との距離、大きさ、色、明るさ、コントラストといった要素により、フラットな写真の中に空間感覚が醸し出されます。

    下準備もなくストリートで写真を撮ることで、ストリート写真撮影の面白さを存分に味わえます。街のビルの輪郭やストリートを行き交う人の動きなど、様々な要素が組み合わさって、面白い構図を備えた1枚の良い写真になる…その瞬間を感じることができるのです。

  • 上垣内 晋

    (京都府)

    GR IIIx

    選評
    日常生活の穏やかな作品です。

    この作品から、自分が初めて写真撮影した頃を思い出します。人に見せるためではなく、自分だけのために、周囲の世界を撮影していました。

    急がないからこそ、ディテールを楽しむことができます。それが人生です。

    写真の美しさは、深い内容や撮影者の技術にあるのではなく、写真を通して伝わる人生と感情にあります。写真を見る者に何かを感じさせ、物語を想像させ、共鳴させるのです。

  • Gareth Bragdon

    (イギリス)

    GR II

    選評
    ストリートでは、スタジオのように新たな現実を創造する必要はありません。ストリートを眺めるだけで、多くの矛盾や葛藤を抱えながら、人生が展開して行きます。

    桃色のスニーカーの男と桃色の服を着たチワワ。どちらを見れば良いのか惑わすような面白さがあります。

    直感力があり、実力が備わった撮影者がGRを自在に扱うと、ある種の自由形式の組み合わせ実験のような、形と意味の衝突や人生の不条理に対する皮肉などを表現する、視覚的に面白いクラシックな写真を作り出すことができます。

    良い写真には、通常、3次元の空間感覚がありますが、重要な要素は内容そのものです。

審査員Jorge Garcia
  • Nita Olan

    (タイ)

    GR III

    選評
    とにかく素晴らしい作品です。全体の色彩。琥珀色の光が飛び交う空。フラッシュを使うことで猫に命が吹き込まれ、作品にダイナミックなエネルギーを加えています。

  • Tianfu Zhang

    (中国)

    GR III

    選評
    この作品は、子ども時代がいかに短く、あっという間に大人になってしまうことを思い起こさせます。おもちゃの鉄砲で遊ぶ子どもたち。今、世の中で起きていることのメタファーとも言えます。色彩も素晴らしいですし、ミラーに映った小さな顔がちょっとした引き立て役になっています。

  • Rikard Landberg

    (スウェーデン)

    GR II

    選評
    少年を捉えた実に面白いポートレートです。虫眼鏡を通してできた歪みが、奇妙で少し不気味な雰囲気を作り出しています。少年の表情には好奇心が溢れ、照明もドラマチック。本当に良くまとまった作品です。写真というのは、必ずしも美しいものや幸福なものばかりを撮るのではなく、時には奇妙なものを撮るのも良い、と我々に思い起こさせてくれます。

  • Nagai Satoshi

    (埼玉県)

    GR III

    選評
    この作品は、日本の田舎町にあると思われる道路で2人の子どもを捉えています。日本の子どもたちの日常の瞬間を切り取っているのが良いですね。2人の子どもはチョウなどの昆虫を捕っています。幼い子どもによく見られる遊びです。道路の先には数軒の家があり、子どもたちが住んでいるのでしょう。視点が目の高さにあることで、人間味のある写真になっています。この視点から、子ども達の親が撮影者ではないかと思っています。モノクロを選んだことで、写真に色あせない魅力が加わっていますし、子ども達の仕草や表情もうまく捉えられています。

  • Umareta Dan

    (フランス)

    GR III

    選評
    乗客で混雑する地下鉄の車両の光景。見ていると、自分もそこに立って、他の乗客と一緒に最寄り駅で降りるのを待っているような感じがしてきます。ダイナミックに撮影されたこの光景で面白い点は、撮影した場所と時代がある程度推定できる、ということです。
    まず、さまざまな人種の乗客が居ること。フランスの光景と推測します。パリでしょうか。眼鏡をかけた手前の女性は、Bluetoothイヤフォン(多分、Apple社のAirPods)をつけてスマホに話しかけています。知ってのとおり、技術は急速に進歩します。将来この写真を見たときに、イヤフォンやスマホの使い方(おそらくボイスメッセージの記録)から、2023年にどうやって連絡を取り合っていたか、思い出すことでしょう。さらに、後ろに座っているマスクを着けた女性からも時代を推定できます。彼女しかマスクを着けていないのが、コロナウイルス感染症のパンデミックの終焉を物語っていて、より「正常な」日常生活が徐々に戻って来ている様子が分かります。私は、ストリート写真を撮影するとき、このような写真を撮ろうと努めています。この素晴らしい光景を観察し、撮影した作者を褒め称えたいです。

  • 金子哲郎

    (東京都)

    GR III

    選評
    日常生活の素晴らしいスナップ写真です。人の生活が滲み出ています。自転車で会社に行く方なら、毎日が晴れの通勤ではないことが分かるはずです。この写真の雪は、撮影の数分前に降り始めたのでしょう。仕事を終えて帰宅時、電車から降りたときに目に入った光景かもしれません。雪の上についた足跡や自転車の轍から、ちょっと前に誰かが自転車を取りに来たのが分かります。自転車には雪が積もり、何かで雪を払ってサドルを乾かしたい気持ちになるでしょう。パーカーに暖かいジャケットを着て、手袋も忘れていないと良いのですが…。思わず物語を作りたくなるような作品です。モノクロ加工で雪と足跡のコントラストが強調されています。

  • 张剑威

    (中国)

    GR IIIx

    選評
    透明な袋のなかを飛びかう不明な生物。蛍かも知れないし、流れ星、いや、火の玉に見えるときもある。想像をひろくうながすのも写真の魅力である。夜、森のなかで微笑ましい事件が、フォトジェニックな輝きを見せているのは、作者の無心に近いアイデアと咄嗟の反応がスケールのある未知の視覚へ、新鮮な感動へと導いてくれたのだ。レンズはさまざまに見えない姿をとらえ、作者はことばにならない新しい何者かと強くシンクロしていることを示しているのだ。

  • 李浩

    (中国)

    GR III

    選評
    地域特有の色彩のなかで日常の倦怠、小さな恐怖や不安に緊張する心理的な光景が刺激的だ。そのリズムあるシーンには動物界や人間社会のストーリーが読み取れるだろう。
    ニワトリの野生の眼、路上の床屋さんの視線も日々の営みや関心が巧妙に写されている。カミソリの触感を不安と緊張で息を止めた眼。ふと、祈への心理さえ漂ってみえるのだ。
    日々のユーモアを素早く捉えた作者の眼は社会のもつ心理への深い関心としてあらわれている。

  • 千葉 竜介

    (東京都)

    GR IIIx

    選評
    郷愁へという確かな通路をもっているのが写真である。あの日その時、写した一枚という懐かしさを誘う。これ以上ない大きな背景、作者は日常をこえて彼方へ向かう生きる喜びを写そうとこの場所、その時間を選んだ。そして記念すべき家族をモデルに。
    上弦の月に暮れかかる海、遠くに消えそうな舟が。間もなく暗闇のなかで波の重なる音が聞こえてくるはずだ。この場所で写真は絶えず瞬間の物語を語り続けている。そして、夫婦が子供を月に向かって差し上げたフォルムには永遠というイメージが踊っている。

審査員John Taggart
  • 高橋敦

    (東京都)

    GR III

    選評
    クリーンで親しみやすい作品で気に入っています。隣のビルからの明かりと電光掲示板の文字は近未来的で、まるで映画「ブレードランナー」のワンシーンのようです。一般的にSNSなどではほとんど公開されない、プライベートな瞬間を撮影しており、素晴らしいです。モノクロでも見てみたいですが、カラーでも全体として良い味を出しています(もう少し明るくても良いかもしれません)。

  • 梁彬乐

    (中国)

    GR III

    選評
    何と言うか…ただただ面白く、思わず笑ってしまう、素晴らしい作品です。自分が初めて髪を切ってもらったときのことは覚えていませんが、こんな感じだったのでしょう。無駄なスペースが無く、フレームいっぱいに被写体が写っているのが素晴らしいです。自然に子どもとバリカンに目が行く構図になっており、いろいろな意味で見事です。SNSでは普通は公開されない、家族のプライベートな瞬間が切り取られています。

  • 单衣

    (中国)

    GR III

    選評
    誰もが休暇中にこのような写真を撮ったことがあるはず。面白くて思わず笑ってしまう、素晴らしい作品です。被写体の表情、ノイズのバランス調整など、いろいろな意味で見事です。モノクロでも見てみたいですが、カラーの方が断然良いですね。もう少し明るくても良いかもしれません。

審査員Sean Tucker
  • nicolas fransolet

    (カナダ)

    GR III

    選評
    写真家オリ・ケレットの代表作を彷彿させる素晴らしい作品です。いくつかの要素が集まって、見る者の心を掴む1枚となっています。第一の要素は、撮影時の時間帯と天候です。仕事で長い一日を終え、雪上を歩いて家路につく途中で出会う冬の夕暮れには、昂揚感をもたらす美しさがあるのをご存知の方も多いと思います。そんな夕暮れを見る者に印象付ける作品です。車の多さからは、皆が温かな自宅へ戻ろうとしている様子が想像されます。そして、一筋の陽光の中、道路を横断する被写体の人影に目が留まります。第二の要素は、色彩です。北半球の冬に見られるゴールデンアワー(スカイラインが黄金色に輝く時間帯)の雰囲気が出ています。冷たい色の影が素晴らしいコントラストをつけています。そして、この写真をさらに良いものにしているのが、撮影者がカメラを構えている目の前の窓です。窓ガラスは綺麗ではありませんが、この窓が、プロミストフィルター効果のように、すべてのハイライトに「柔らかい光」の質感を与えています。そして、もう1つの窓ガラスの表面でピンボケして写る陽光。その光は、フレームの左手、ゴールデンアワーのオレンジ色とは逆の諧調で重なって、追加の色の層となっています。ただ一点、作者がトリミングを選んだ理由は分かりません。フレームの外には何があるのか。フレーム内にストリート上のものをさらに多く入れてこの光景を拡大できただろうか。フレーム右下のやや注意を逸らす信号や左中央から右中方に見える車を多く写したり、逆に減らしたりできただろうか。そんな疑問が浮かびます。この写真のように非常に多くの要素を取り込む場合、構図に妥協せざるを得ないことも多く、作者はできるだけのことをやったものと思われます。素晴らしい作品です。

  • 梁彬乐

    (中国)

    GR III

    選評
    この作品にはとてもクラシックな雰囲気があります。スマホや衣服は別として、「時代に取り残された」印象を受けます。何十年も撮影されてきた光景のようで、時を越えた感触があります。フレームの左手には見事な奇数の法則があり、情熱的な3人のマリリン・モンローが右手で興味無さそうに座っている男の子を見ています。男の子の眼鏡と、男の子の背後から覗く「クールな猫」の眼鏡のお揃い感も良いです。この作品には「ユーモア」が見て取れます。現代人のスマホへの執着、そして過去への無関心に対するメッセージとも取れます。色は、背景のアイスクリームカップやモンロー、ユニオンジャックに同じポップ調の赤が使われていて素敵です。フレームの構図や要素の配置は適切で、被写体の間隔も十分あります。モンローの目に引き寄せれて視線が左から右へ移動し、最後に右手の男の子に留まります。ただ一点、フレームを少し前に寄せてうまく引き締めると、左後方にある5つ目の椅子の一部がカットされ、フレームがもっとすっきりして良くなったと思います。素晴らしい作品です。

  • Daniel A. Durazo

    (アメリカ)

    GR II

    選評
    この作品の雰囲気が大好きです。シャープネスとディテールへのこだわりは過大評価である。それを証明してくれる作品です。この光景を綺麗な色とシャープなディテールで、速いシャッタースピードで撮っても、本作品のような感じには出来上がりません。私の好きな作品、写真家ジェレミー・スネルの「Boys of Volta」(ヴォルタの少年)を想起させます。被写体を暗くしたうえで荒れ模様の空の明るさを残すコントラストで、フレーム内の人物の匿名性を保ち、背景で嵐が去っていく様子をうまく捉えています。シャッター速度が遅くなると甘い画像となりますが、水泳選手と作者、両者の躍動感、生命感を感じさせます。コントラストと露出の選択は完璧です。あえて指摘するのであれば、けられが若干大きすぎるのと、少しだけ広角にすればフレームの右隅にある被写体に少し余裕が出ていたと思います。素晴らしい作品です。

  • Nikita Erphène

    (フランス)

    GR 1

    選評
    空と水面を始めとして、画面全体が青系に発色しているのがとても美しいですね。彼女の着ている服が軍隊の制服の様に見えるので、それが画面を引き締めているのでしょうか。帽子も徽章が付いていて彼女の立場を勝手に想像して思いを巡らせます。それに加えて、彼女が目を閉じていることの不思議さが、私たちを迷路に誘い込みます。きっと寒い地方なのですね。空気感がピーンと張りつめる中、日常と非日常の間を無限の行き来している不思議な写真です。

  • 田口忠正

    (埼玉県)

    GR

    選評
    踏切で待つ人々ですが、車内から見えるこうした場面に私も写欲をそそられます。ドアの所に立ってこうしたショットを撮りたいと何度も試みましたが上手くいきませんでした。人々の位置関係、細い路地に先まで見通せる構図。素晴らしいですね。踏切を待つ人々は人から見られているとは知らずに無防御な表情を見せます。無防御といっても電車という轟音と共に過ぎ去っていく大きな物体の質量に圧倒されているために寝入っている時の表情とも違うのです。踏切という日常が作り出す特別な表情なのです。

  • 徐铭

    (中国)

    GR IIIx

    選評
    高齢の女性がお店の表に3人、そして店の中にもう1人が見て取れます。頭には風習なのでしょう、洒落た布を被っています。仕事が終わるとこうして顔馴染み同士がごく自然に集まり、一時を過ごすのでしょう。まさにこの地方に日常が写されています。彼女たちが健康そうなので、この写真を見た私たちは食べ過ぎ、運動不足を大いに反省させられます。彼女たちは何万人が見つめるステージに立ったことも、何億円も稼いだことがないかも知れません。そうした名誉も欲も超越した人生があるのだと私たちに語りかけているようです。日常を写した一枚に深い人生論が語られていると感じるのです。

  • Brian Reilly-Troy

    (アイルランド)

    GR II

    選評
    晴れた日、川辺の日だまりで男が読書しています。陽光、水、壁、読書する人と様々な日常的要素が、ゆったりとした心地よい雰囲気の中で整然とまとまっています。このような人生の瞬間はありふれたものですが、鮮明で、実際にそこに居るような感覚になります。
    作者は、日常的シーンを光と陰で表現しています。構図が絶妙ですし、色調も豊かで素晴らしいです。モノクロ表現が写真を簡明にし、人物をはっきりと際立たせています。光と陰の交差、川のさざ波、地面の質感、人物の姿勢。それぞれが不可欠であり、これらすべてが調和し、統一されています。

  • 薏仁的一天

    (中国)

    GR III

    選評
    列車内のあるシーンを撮影したものです。座席が整然と並ぶ車内の通路でフレーム外から伸びた2本の足に焦点を合わせています。写真を見れば、誰かが座席でひと休みし、寛いで足を伸ばしていることが容易に想像できます。足のディテールに焦点が当たっており、ユーモラスなだけではなく、イマジネーションもかき立てます。
    写真のシーンはごく日常的で、よく見かけられる光景ですが、カメラで撮影した人はほとんど居ません。腕の良い写真家は、ディテールを捉える力量があります。作者は、些細なことに本質を見出し、日常生活で見落とされがちなディテールにレンズを向けています。日々の暮らしを愛する、観察力のある方なのでしょう。

  • George Pitt

    (イギリス)

    GR IIIx

    選評
    作者は、ユニークな視点で日常光景を捉えています。上半身裸の3人の老人が日だまりでテーブルゲームを楽しんでいます。上からのアングルが構図に整然とした印象を与えています。一見静的に思える作品ですが、その実、動的感覚に満ちています。考え込む、凝視する、選択するという行為が動的に展開しているように見え、その場に居なくてもこのゲームを感じさせてくれます。
    手の甲の血管、腕のしわ、背中の肩こりパッチ、テーブルや床の質感。すべてが日常生活の痕跡です。色とディテールにも非常に深みがあります。適度に豊かな光と陰がディテールに深みを与え、イマジネーションをかき立てる空間にしています。

  • Ryota Yamada

    (東京都)

    GR IIIx

    選評
    子どもの頃が一番自由奔放でしょう。両手を広げて走り、鳥のように自由に飛べたらと想像します。学校からの帰宅途中、女の子はどうして「舞い上がっている」のでしょうか。先生から褒められたのでしょうか。新しい友達ができたのでしょうか。今日の晩ご飯が好物なのでしょうか。今日はパパと一緒に遊べるのでしょうか。それとも、昨日なくした消しゴムが、魔法でもかかったかのように出てきたのでしょうか。子どものころ、私たちの幸せはとてもシンプルなものでした。作者は、私に素晴らしい癒やしの一時を与えてくれました。このような写真においては、落ち着いた構図や暖かみのある色調も、あくまで付加的なものに過ぎません。

  • 巽慶一

    (岡山県)

    GR III

    選評
    作者はGRの多重露出機能を使い、2回の露光で写真を仕上げています。ごくありふれた日常的な光景が、特殊な方法での撮影によって魅力的なものになっています。露光1回の写真の場合、良く日の当たる通りの光景は、たくさんの陰によって鮮明となります。作者は、このような光と陰の変化をまず観察したのかもしれません。2回の露光により、写真には闇と陰の構造が完成します。この写真にはイマジネーションと生活の楽しさが満ち溢れおり、それらこそが写真撮影の魅力でもあります。

  • HantaoTB

    (中国)

    GR III

    選評
    人生は素晴らしい旅です。そして、日常は異なる景色の移り変わりです。釣り人は、美しい景色が眼前に広がっていることに気付いていないかもしれません。我々にこの美しい瞬間を見せてくれているのは、作者の目です。釣りをしているのか、それとも景色を見ているのか、それは問題ではありません。大切なことは、それがとても素晴らしい瞬間であったこと、そして作者も釣り人もとても気分が良かったということです。実際、撮影者の多くは、撮った写真を16:9のサイズにクロップしたり、撮影中に不要な部分が写らないようにしたり、「引き算」を行います。写真の純度は高まるかもしれませんが、見る側が混乱してしまうような表現になるでしょう。しかし、この作品においては、GR IIIの28mmの広角により、ドラマティックな状況をそのまま残らず説明しているように思います。問いとその答えがすべて作品の中にあります。

複数の審査員が選定した作品
  • Heo Gwangho

    (韓国)

    GR IIIx

  • 審査員

    周梦莹 Zhou Mengying

    選評
    家族の日常を切り取った作品です。幼い女の子に射す日の光。幸福感、愛情、満足感に満ち溢れた写真です。光と陰、構成、色などの技法を脇役として、リアルな心の動きを捉えています。
    写真の美しさの1つは、過去を静止させ、その瞬間を記録することです。平凡に見える家族の日常の中にも、素晴らしい、特別な瞬間がたくさんあります。写真家ニール・ライファーの言葉に、「時として、最もシンプルな写真の撮影が一番難しい」というものがあります。腕の良い写真家がカメラを構えると、まるで錬金術師のように、人生の些細な出来事を抽出・凝縮し、心を打つ1枚の写真に仕上げることができます。

  • 審査員

    周潤 Zhou Run

    選評
    光線を辿ると、写真の中央、可愛らしい満面の笑みを浮かべた子どもに目が留まります。全体の色はとても調和が取れています。彩度の低い緑と女の子の服のピンクが、光と陰に調和しています。食事の準備をする母親、木を抱くように母親の足にまとわりつく娘。目を閉じると、世界で一番温かくて安心感のある場所が広がります。このような日常生活を捉えることも写真撮影の意義の一つです。

  • 審査員

    mookio Chen(阿默)

    選評
    人生観を撮影テーマとすると、愛情の描写が何よりも人の心を動かします。

    陽光がテーブルを掠めて斜めに差し込み、光線となり、ダークグリーンの台所を背景として、温かい黄色の光で女の子を包んでいます。料理をしている母親と、その母親の膝に抱きつく娘。この上ない愛着と愛情の表れであり、自然の光と陰が人の心を動かす愛情を浮き彫りにしています。

    台所の片隅で起きた記録すべき瞬間。

    環境や時の変化を通じ、人生の折々の光景はとても貴重な瞬間となります。誰かが微笑む様子や友人が集う瞬間など、様々な色鮮やかな出来事があることでしょう。シャッターを切りさえすれば、その尊い瞬間を皆と共有できるのです。

  • stephane mangin

    (東京都)

    GR III

  • 審査員

    周梦莹 Zhou Mengying

    選評
    日常のうたた寝の1コマで、自然色を使って暖かみのある平和な写真に仕上げています。真ん中で構図を左右に分けており、それぞれが対称的に響き合うという、非常に巧みで面白い表現です。老人と赤ん坊、ハンモックとベビーカー、老人のしわと赤ん坊のモチモチした肌。すべての構成要素が似ていますが、まったく同じではありません。空間が果てしなく繋がっているようにも感じさせます。
    作者はカメラで日常の美しい瞬間を切り取るだけではなく、時の軌跡と流れを記録し、観察しています。シャッターを手当たり次第に切ったように見える写真は、作者の心の奥を表現しています。写真全体で暖かみと調和を感じさせる一方、中に対立するドラマも隠されていて、非常に面白いです。

  • 審査員

    안태영 An Tae-young

    選評
    とても好きな作品です。一番の良作だと思います。

    視覚的なコントラストと真ん中で分けられた構図が良いのは勿論ですが、1枚の写真の中に1人の男の人生を完璧に入れ込んだ人生のコントラストとでも言える表現が、非常に良いです。

    広すぎず、狭すぎず、見る者に映画のワンシーンを見ているような心地良い感覚を与える、優れたフレーム構図の作品です。左右を交互に見ながら、様々なことを考えさせられます。

  • 審査員

    mookio Chen(阿默)

    選評
    作品は楽しみながら見ることが大切です。イメージの対比は作品を面白くする最良の手法です。

    人生の物語を対比で見せるときは、老人と赤ん坊を比べると一目瞭然です。老人の歩みの幕切れ、見守るのが楽しみな赤ん坊の将来、これらが同時に伝わります。

    カメラを生活に取り入れると、周囲の人やものを観察し、いろいろな人に出会う方法が分かります。そして実際に出会い、シャッターを切って望めば、出会いの瞬間に起きた共鳴を記録することができるのです。


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